第1章

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どうしてこんな事になったんだろう。 自分でもよく分からない。 今、私の目の前に二人の人物が血を流して倒れている。 自分がなぜこんな状況になったか、はっきり思い出せない。 意識が朦朧としているのを自覚する。 私は震える手で今キーボードを打っている。 今日までに起こった事を文章に起こそうと思ったのだ。 文章にすることで冷静に思い出せるかもしれない。 いや、人が倒れているのにこんな事をしている時点で私は冷静では無いのかもしれない。 それでも、この文章を誰かが見てくれればと思う。 そして、どうして私がこんな事になったのか。 誰かにそれを教えてもらいたいのだ。 それが私の願いです。 私がこの町に引っ越してきたのは今からちょうど一年ぐらい前だと思います。 生まれ育った町から逃げるように出てきたのです。 それは全部私自身のせいだった。 自分勝手な被害妄想と身勝手な行動で、私は自分の恋人をこん睡状態にしてしまったのです。 いえ、本当は恋人ですらなかった。 あの人は優しかったから、私の事を考えて付き合ってくれていただけなのです。 でも、好きでも無い状態で付き合い続ける事を止める為に、あの人は本音を私に話してくれました。 ただ、それを受け入れられなかったのは私。そのせいであの人はこん睡状態になった。 しかも、その受け止められなかった事と、こん睡状態になった事を友人のせいにしてしまった。 あの友人は私の事を許してはくれないでしょう。 でも、それでもまだ私の事を友人と呼んでくれればいいなと言う希望を持ってしまっている自分のいるのです。 そんな最低な人間。 それが私、高橋紗英です。 この町に来た頃の事ははっきりと覚えていません。 靄がかかっているというか思い出そうとしても記憶に残っていないのです。 ただ、自分が周りの人達にイライラしていた事だけは覚えています。 親切にされても、罵られても、誉められても、全てがストレスでしかありませんでした。 ただ挨拶をされるだけでも怒りの感情が湧いてくるのです。 でも、私はそんな私が嫌いでした。そんな感情を持ってしまう自分自身が許せなくて、どうしてこんな人間が生きているんだろうといつも思っていました。 人を憎んだり羨んだりする事ばかりしていてはいけないと思えば思うほど、それは止められなくて、そんな自分が許せなくて、生きている事が辛くて。
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