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ただ、亜希子みたいに友達が多いわけでも勉学に励んでいるわけでもない。
なんとなく自分の居場所が見つけられずに日々を虚しく過ごしている。
そんな自分が惨めで仕方がない。友人なんて大学には必要ないと強がって見てもそれはやはり所詮強がりなのだ。
皆には惨めな自分を晒したくなくてなんとなく誤魔化した。
大きくて下品な笑い声が突然響き渡った。向かいの席に座っている男たちが笑ったらしい。
思わず肩がふるえる。ああいうタイプの人間は好きになれない。萎縮してしまう。そして萎縮してしまう自分も嫌いだった。
「どうしたの?」
綾が声をかけてきたので意識が目の前の事に引き戻される。慌てて手を振った。
「なんでもないよ。それにしても皆、昔と印象が変わったね」
辺りを見回して言う。
「そう?」
亜希子が不思議そうに自分の体を見回す。
「亜希子は変わったよ。なんて言うかもっと男の子っぽかった」
「いや、あれは中学生の頃だったしさ」
少し恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「綾もなんか雰囲気変わったよね。大人しそうだったのに。今はどこかしっかりしてるように見えるし」
綾はそれに対して小さく笑うだけだ。確かに、昔と比べて何か違う様な気がする。おどおどしている部分が無くなったとでも言うのだろうか。よく分からないが何かが変わったと思う。もちろん良い意味でだ。
「宏樹はあんまり変わってない?」
「はは。俺は元から地味な方だったしな。それよりも驚いたのは直哉だよ。ある意味似合っていると言えば似合ってるけどな」
直哉はパーマの掛かった髪にアロハシャツだった。軽薄そうな格好だが、どこか似合っている。
良く見ると整っている顔をしているから、それだけでもまとまって見えるのかもしれない。
しゃべると台無しだが。
「ああ、天然のパーマが酷くなってきたからな。もういっそパーマをあてて誤魔化す事にしたんだよ。雨の日は髪の毛の事はもう諦めているといった方が良いな」
「でも、なんでアロハなんだ? 確かに似合っているけどね」
「単純にアロハが好きだからに決まっているだろう」
自信満々に答える直哉に呆れ半分に頷く事しかできなかった。
直哉の言葉に皆が笑った。
「そう言えば、もう一人いたよね」
すっかり忘れていたが、この事を皆に会えば聞こうと思っていたのだった。
「もう一人?」
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