孝介

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「そんな事言っているから彼女出来ないんですよ」 心に大きなナイフを突き刺された。立ち直れないかもしれない。 「じゃあ、先輩。楽しみにしてるので」 笑顔で俺に告げる。反論しようと口を開こうとした時、扉が開いて客が店内に入って来た。 『いらっしゃいませ』 二人で同時にそう言った。         コンビニのバイトが終わって家路につく。秋穂ちゃんは俺よりも先にバイトが終わっていてすでにいない。 さすがに辺りも暗くなっていて家路を急ぐ。 日は沈んでいてもまだ蒸し暑かった。 暗い路地を自転車に乗って十分程で自宅であるアパートが見えてきた。 大学生になって実家を出て一人暮らしを始めた。初めは家に誰もいないと言う事がもの寂しく感じたものだったが今はその静寂にも随分慣れた。         家賃が安い所を選んだので、アパートは築何年経っているか分からないほどに古ぼけていた。 それでも、造りはしっかりしているし、音漏れも酷くないから気に入っている。 玄関の鍵をかけて鞄を下ろした所で携帯が鳴った。 「もしもし」 「おおう。俺。直哉」 「ああ。どうした」 「今度の飲み会、皆来るって」 「皆?」 「そう、宏樹や亜希子に綾も」 懐かしい名前だと思った。皆同じ小学校で中学生になっても一緒に遊んでいたメンバーだ。 この辺りの田舎では小学校から中学校まではほとんど同じ校区内にある為、小学校の友達がそのまま中学校での友達になる事が多い。 小学校の低学年の頃に知り合った俺達は約九年近く友達関係を続けていたと言える。 高校になるとさすがに学校の選択肢が増えて皆バラバラになってしまい、連絡も途絶えがちになっていた。         実際直哉と連絡を取ったのもつい最近の事だった。 突然掛かって来た知らない番号の電話にでたらそれが直哉だったのだ。 「どうやってこの番号知ったんだ?」 懐かしさもあったがまずそれが疑問だった。 「孝介。世の中には知りたいと思って調べて分からないことなんてそんなにないんだぜ。  社会は全て繋がっているんだよ。人は一人では生きていけないからな」 ぺらぺらとよく分からない言葉が口から流れ出てくる。 ああ。そう言えば昔からよくしゃべる奴だったなと思いだした。 「つまり。誰かから俺の電話番号を聞いたんだな」 「平たく言うとそうだな」 あっさりと認める。
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