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直哉が俺に電話してきたのは久しぶりに会おうという内容だったのだ。
もう随分と会っていなかったので素直に楽しそうだなと思った。
「他の皆も呼んで酒でも飲もう。皆にも連絡を取ってみる」
そう言ったのが二週間ほど前だった。で、その結果が今掛かって来た電話だ。
「場所はこっちで決めたけどよかったか」
さほど心配していない様子で聞いてくる。
俺はどこでもよかったので肯定する。直哉が指定してきた場所は駅前にあるチェーン店の居酒屋だ。
「じゃあ、楽しみにしているよ」
直哉はそれだけ告げると電話を切った。
通話が切れた電話を座布団の上に投げる。
鞄を部屋の隅に置いてそのまま床に寝ころんだ。
懐かしい友人たちの事を思い出す。皆今はどんな風になっているだろう。最後に会ったのは中学生だ。
すっかり印象が変わっている可能性もある。
寝転がって見える視線の先にある押し入れが見えた。
ふと思いついて押し入れを開けて奥の方に投げ込んであった段ボールを引っ張りだした。
たしか、その中にアルバムが入っていたはずだ。
写真を眺めて昔を思い出して見ようと思ったのだ。
奥から引っ張り出したアルバムはそれなりの大きさだった。
一人暮らしをするにあたって別に持ってくるつもりは無かったのだが、母に実家に置いておいても邪魔だからと押しつけられた。
アルバムは中学生までの俺の写真が多く貼り付けられていた。
写真の多さは両親の愛情のおかげだろうか。高校生になってからは写真を撮られるが気恥ずかしくなって逃げ回っていたので途端に枚数が少なくなっていた。
アルバムの中の小学生の俺は手や顔を泥だらけにして笑っている写真が多かった。
友達たちと一緒に写っている写真もたくさんあった。
直哉と俺はいつも先頭を切って馬鹿をしていたのだろう、俺の横で胸を張って泥だらけになっている直哉がよく写っていた。
それを咎めるように怒った顔をしているのが亜希子だった。
酷いものには俺と直哉が亜希子に追いかけられている写真まであった。しかし、どこかおかしくてその写真を見ながら笑ってしまう。
宏樹は俺達から少し離れた所でそれを見て笑っていたり、見守っていたりする写真が多かった。
線の細かった宏樹は小学生の頃は俺達の後ろに付いてくる事が多かったのだ。
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