孝介

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中学生になった時は逆に俺達が勉強を教えてもらいに宏樹の所に行く事が多かったけれど。         綾も宏樹と同じく写真の隅に恥ずかしそうに写っているか、俺達を追いかけまわす亜希子をあたふたしながら止めている様な写真が多かった。 小学生の頃の写真が一番多いのはおそらく両親が写真を撮っているからだろう。 中学校になってからは誰が写真を撮っていただろう。宏樹がよくインスタントカメラを持っていたような気もする。 一通りアルバムを見た後アルバムを閉じる。妙に部屋が静かに感じた。         一人暮らしの部屋には当然だけれど俺がおこす音以外は一切の音がしていなかった。 アルバムを見つめる。この頃は無邪気だったなと思う。ただ目の前の事を楽しんでいればそれだけで楽しかった。 いつの間にこうなったのだろう。大学が夏休みに入ってからバイト先の秋穂ちゃんと店長以外とまともに会話していないなとなんとなく思った。         一度そう考えると妙に部屋の静寂が気になるようになってしまった。 俺は寂しいと感じているのだろうか。よく分からない。 この部屋にもしあいつらが居たらどうなるだろう。そんな事を想像してみる。 直哉が馬鹿な話を自慢げに話し、俺がそれに乗っかって馬鹿な事をする。それを怒るように咎める亜希子。その亜希子を止めるようと必死になる綾。それを少し離れた位置で見ている宏樹。そんなシーンが見える様な気がした。 「あれ?」 思わず口から疑問が飛び出した。何か足りない。そんな気がする。記憶がノイズがかかったようにあやふやになった。 誰か。もう一人いなかったか?         記憶があいまいになる。誰かもう一人一緒に居たような気がする。 アルバムをもう一度頭から見直す。 でも五人で写っている写真ばかりだった。 気のせいだっただろうか。 まぁいい。どうせ皆でまた会うんだ。 その時に確認しよう。そう決めてアルバムを閉じた。         土曜日の飲み会の待合わせ場所は駅前のロータリーだった。 あまり目印のない田舎町だ。待合わせするにはちょうどいいだろう。 他にも何人かが誰かと待ち合わせしているのだろうちらほらと人影が見える。 腕にはめた時計を見る。約束の時間は六時だった。時計は五時を指している。 少し早く着きすぎたなと思う。家から駅が遠い為早くに出たつもりだったのだが、予想以上に早く着いてしまった。
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