孝介

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時間を持て余すので明日の秋穂ちゃんとのデートをどうするかを考えることにする。         デートか。どこに行くかなんて全く考えていない。どうすればいいんだろう。 まったく考えなしに行ったら秋穂ちゃんからまた辛辣な言葉が飛んでくる事は火を見るよりも明らかだ。 それを考えるだけで憂鬱になる。 おかしいな。俺の記憶ではデートと言うのは楽しみなイベントのはずなんだけど。 不思議だ。         正面のベンチで音楽を聴いているらしい女の人が体を伸ばして時計を見る。 あの人も待ち人はまだ来ないらしい。 単純に映画とかに連れて行けばいいのかもしれない。 映画と言っても何かやってたかな。携帯を取り出して近くの映画館で上映している作品を探す。 ホラーとアクション映画ぐらいしかやっていない。どちらも秋穂ちゃんが見るとは思えない様なジャンルだった。 最近話題になっている映画もあるにはあるが、これはものすごく甘い恋愛映画らしい。 恋人でもないのに恋愛映画を二人で見に行くというのもなんとなく気まずい。 あ、恋人なのか。         ふとロータリーの向こう側にあるベンチに座っている方から視線を感じた気がしてそちらをみるが男女が座って話しているだけだった。 気のせいか。どうにも人の視線を気にしてしまう。 自意識過剰だと思うが自分ではどうにもならない。         自分が辺りを見回していたのを誤魔化すように携帯を開く。 時計は待ち合わせ時間を少し過ぎた所だった。 そういえば、待ち合わせはロータリーと聞いていたがロータリーのどこかは詳しくは聞いていない。 もしかして皆は違う場所ですでに合流しているかもしれないと不安になった。         電話をしようにもメルアドしか知らないのだ。 仕方なく確認のメールを送る。 「なぁ、さっきからおかしいと思わないか」 突然後ろから声がして驚いて振り向く。 パーマがかかっているらしい頭の若い男が何やら考え事をしているように立っていた。 「皆が俺たちを見ている」 辺りを見回しても俺以外に人影はない。やはり俺に話しかけているらしい。         俺に話しかけてるのか? と自分を指さして意思表示してみるが男はそれを無視する。 「あそこでイヤホンをはめている女。あいつは音楽なんて聞いていない」 指さした先に視線を送ると、正面に立っていた女と一瞬視線が合った気がした。
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