帰国、そして、

9/13
前へ
/156ページ
次へ
誰かが叫んでる。口を閉じていられない。ヨダレが垂れちゃったらみっともないな、なんて事を頭の隅っこで考えてた。 「いやあああああああああ……っ!」 この、痛いのを抜けて、空っぽになるギリギリで大地に『アタシ』を広げるんだ。 頭がガンガンする。 「……『水面』を選ばないからだよ。そのままだと、死ぬよ?」 呆れたみたいな、諦めたみたいな未来のアタシの声が聞こえたような気がした。 「アタシ、手伝えないからね」 アタシの気配が消えて、寒いのが増える。 アタシの予想じゃ、これを三日。三日耐えたら、痛いのは楽になるハズなんだ。 辛いけど、しょうがない。 ……だって、アタシ、アラステアさんに『水面』になって欲しい。他の人じゃ、やっぱり、やだ。 でも、それは出来ない。 アラステアさんにはアラステアさんの望み通り、この国の王様でいて欲しい。 だったら。 だったら、アタシは、アラステアさんを水面にして、ずっと一緒にいることをあきらめる。他の方法で、アラステアさんと一緒にいることにする。アラステアさんが死んだあともこの国を護る存在になりたい。 この神殿にいる、他の精霊の成れの果てみたいに。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加