第1章

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白川は、王龍、白龍、雷龍、朱龍の四人の七竜会幹部を引き連れて、日本に戻った。 空港では、黒金武史が慇懃に出迎えてくれた。死んだ関東連盟の幹部達に代わって、これからの山王会を支えてくれそうな 若い男達も四人、出迎えの中にいた。 白川は、四人の顔を覚えてから、黒金とベンツに乗り込む。そして、使えそうか?と尋ねる。 白川が見た所、使えそうな人間ばかりだったが、あえて黒金に訊ねるのだ。黒金にしてみれば、自分は白川から信用されている、 と思うだろう。白川の人たらしと言われるゆえんである。「はい。特に、この車を運転している沖田は相当使えます」 「沖田光展(みつのぶ)と申します。今後とも宜しくお願いします」顔は若いが、キリッとした精悍な面魂をしている。 落ち着いた、いい声だ。二十九歳、独身である。年齢の割には、この世界の事をきっちり判っている。 白川は、片腕に欲しいと思ったが、無論、黒金の前では微塵もそうは見せない。「どこか、いい料亭はおさえられたか?」 「それが・・・急だったもんで『華屋』しか空いてませんでした」「うん?別に、いいんじゃないか?」「わかりました!」 黒金は、白川のこういう、変なプライドが無い所が気に入っている。新しく会長になろうというくらいのヤクザなら、 普通は前会長の手垢のついた料亭など使いたくもないだろう。 「それから、今まで付き合いのあった警察の人間が、 雹という殺し屋に全員殺されたので、代わりのスパイを見つけておきました。 今日の座敷にも呼んであります」「黒金、いい仕事するじゃないかよ!」白川は少し驚いた。指示した事すらできなかった男が。 今回の色んなトラブルで性根が座ったのだろうか?一度は切り捨てるつもりだったが、これなら今後も使えそうだ。 「今夜の会合には、お前が代表として出ろ。俺は後見人にまわる。臓器ビジネスだけじゃなく、 これからは、でかいビジネスを俺の代わりに少しずつ、お前に任せていく」黒金は、その言葉に目を見開いて喜んだ。 「はい!有難うございます!」「だから、今までやってきたシャブと女の仕事は沖田に任せろ。 お前は早くステップアップするんだ」「はい。俺、頑張りますよ!沖田、そういう事だ。俺のあとを宜しく頼むぞ!」 「はい。黒金さん。良かったですね」沖田は、こんな時でも冷静だ。何か特別な意志の力を白川は沖田に感じていた。
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