第1章

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周龍は、朱龍という女幹部が中国へ連れて帰るらしい。朱龍だけ空港から別行動になっている。「沖田、とかいったな」「はい」 「今夜の会合に、お前も出ろ。これからは黒金の片腕として仕事を補佐するんだ。黒金、そういう事だ。膳を二人分追加しとけ」 「あっ、そうか。すんません。すぐに電話します」こういう所だ。抜けた野郎だ。そのために、沖田を片腕につけたのだ。 こいつは、うまくやってくれそうだ。ゆくゆくは黒金を抜いて、俺の片腕になってくれるだろう。 沖田も、白川のそういう意図を察している様だ。バックミラー越しに白川の目を見据えて、軽く肯いている。 黒金は、華屋に予約追加の電話の後、そうそう、と想い出した様に話を切りだした。 「白川さん。関東連盟を潰しやがった野郎が判りました。 新しく山王会のスパイになった、風見鶏という男からの情報なんですが」 「ほう。やっと、わかったか」「はい。警察高官や、最近の、政府の偉いさん連中を殺しまくってるのも、 雹という殺し屋だそうです。その世界では伝説的な奴らしいですよ。警察に犯行声明が届いたらしくて。」 「で、見つけたのか?」「いや、それが全く行方がわからないそうなんです。公安が動いてるらしいですが、 目撃者の証言では、ホムラ病院の院長の双子の兄じゃないかって話もあるそうで」 「何?」白川は、焔武の事を思い浮かべていた。 「その証言をした奴は、どんな奴だ?信用できるのか?」白川は黒金にそう訊いてみた。 「それが、関東連盟が潰されたバーに、一緒にいたっていう、女子高生二人の証言なんで、公安も本気にしてないみたいです。 その、女の子の一人が、ホムラ病院でバイトしてて、一度だけ院長と会ったらしくて。 雹の顔が、その院長の顔に似ていたって言うんです。でも、髪型も髭も違うし、サングラスもかけていたって事なんで、 それじゃあ、まるであてにならんって事になったらしいっすよ」 「ほう。確かにそれじゃ、あてにならんな。 しかし、話だけは聞いておきたいとこだな」「はい。その女子高生の一人は、有名モデルの橘葉子なんすよ」 「ああ、あの橘百貨店グループのか」「よく知ってますね!」「まあ、ちょっとな」 「それで、家に行ったら、住み込みのバイトで、いないって言うんですよ。 あのクソ執事!いくら聞いてもバイト先を教えないんです」「そりゃ、お前が訪ねても、教えんだろ」
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