第1章

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「そうすか?それで、橘のほうはあきらめて、もう一人の子の家に行ったら、えらい貫禄のジジイが出てきて、 こっちもダメでした。それで、雹に顔が似てるっていうホムラの院長の顔写真を手に入れようと思って、 一応病院のパンフを持ってきました」「ほう。見せてみろ」「あ、いえ。ここにはありません。家に置いてあります」 「じゃあ、持ってきました、じゃ、俺が誤解するだろ?」 「あ、そうか。すみません。白川さん。いつになく、つっこみが厳しくないすか?」「そうか?」 白川は、黒金のこういう、日本語が怪しい所に気を付けてくれ、と、沖田にわかる様に、態とつっこんでみせていたのだ。 見ると、沖田が微笑んでいる。どうやら、白川の意図は伝わった様だ。しかし、焔武が俺に近づいてきたのは偶然だろうか? そして、雹という殺し屋を俺に教えてくれたのも。もし、雹が武の兄で、裏で繋がっているとしたら、何か、特別な意図があるのか? 「やはり一度、その司一十三、とかいう女に詳しい話を聞く必要がありそうだな。 焔武のほうには俺から話を聞いてみる。ちょっとした知り合いなんでな」 「ああ、そうなんですか。ところで、臓器ビジネスの受け入れ先の病院も、ホムラなんですけど」 「ああ。だから、焔武の事は知ってるんだ」「今回の雹の事件と、なんか関係があるんですかね?」 「さあな。ただ、臓器ビジネスは、東郷が仕切ってるんだ。院長の焔武はノータッチらしいからな」 これは、焔武から頼まれている事だ。 東郷には、臓器ビジネスの事を、院長である自分は知らないという事にしておきたいと。 たぶん最悪、事件が表沙汰になった時のために、東郷を捨て駒にするつもりなのだろう。 トップに立つ者としては当然考える事だ。白川にはよくわかる。 「じゃあ東郷は、院長に黙って、このビジネスをしてるって事ですね」 「ああ。そうだな。だから、今日の会談で余計な事は言うなよ」 「わかりました。でも昔っから、ホムラって病院は、ヤクザの世界とのつながりが深いって噂だったけど本当だったんすねえ」 「そうだな」
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