第1章

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「あっ、そうそう。その司一十三ちゃんなんすけど。なんか、レディース同士の頭として、タイマン張るらしいですよ」 「ほう・・・ケンカ、強いのか?」「ええ。美幻花の田中智子に勝ったらしいです」「そのタイマン、いつだ」 「さあ・・・噂を聞いただけですから」 「お前な。いくら金にならんからといっても、うちは美幻花のケツ持ちなんだぞ。 もし、司一十三が負けでもしたら、相手チームのケツ持ちに対して、うちは面子がたたんだろうが」 「相手チームは紫幽嬢なんで、ケツ持ちは、同じ山王会の室岡礼二です。でも、ケツ持ちっていってもガキの女ですよ。 しかも、男も薬もやらないってんで、室岡も相手にしてないって噂です。だから、うちも、ほっとけばいいんじゃないすか?」 「バカ野郎!時期を考えろ!今回、鬼頭が死んだからいいが、もし生きていたら、どうなってる?ヤクザは面子の世界だ。 いくら普段は、ほったらかしていても、ケツ持ちっていう立場と、頭同士のタイマンで負けたって事実は残るんだ。 その噂を流されてみろ。ヤクザは縁起を担ぐ生き物なんだ。 勝負事に負ける様な人間は、会長に相応しくないと思い始める人間も出てくる。 俺の会長就任の妨害工作としては十分だろう?しかも、それをきっかけに戦争を吹っ掛ける事もできる。 ヤクザってのは、そうやって計算ずくで戦争やる人種なんだ。お前もよく知ってるだろう。黒金、今が一番大事な時なんだ。 こういった事には最大限の気を配ってくれ!」 「わっ・・・わかりました。迂闊でした。後輩の指導に忙しかったもんで、つい。すんません」 「いや、黒金。俺も、中国に入り浸りすぎたよ。山王会会長の座に座るまでは、気を抜かない様にしようぜ」 「はい!わかりました!」「ところで、偶然とはいえ、鬼頭がいなくなって助かったな。 これで、鬼頭が生きていて、司一十三が負けたとしたら、鬼頭会長って線もあったぜ」 「やっぱり、白川さんには天が味方してくれてるんすよ」 「黒金。天祐ってのはな。引き寄せる努力をする人間にだけ、あるもんだぜ。覚えとけよ」「はい。わかってます」 白川は、黒金に言った様で、実は、沖田に伝えたかったのだ。バックミラーを見ると、沖田と目が合った。 沖田の目力が強くなる。どうやら伝わったらしい。 白川は機嫌がすこぶる良くなる。
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