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山王会会長、黒崎竜三の顧問弁護士、犬養衛(いぬかいまもる、五十八歳)は、黒崎会長と鬼頭の死を昼のニュースで知った。
心臓に持病を持つ犬養は、普段から、なるべく興奮しない様に心がけていたが、流石に今回のニュースには、驚きを隠せない。
急いで事務所の大きな金庫を開け、一通の封書を取り出し、小さいジュラルミンケースに入れ、鍵をかけた。
そして、夕方まで、山王会関係の主だった組長に、手はず通りに電報とメールをうった。
一通りの事が終わったのは、夕方5時をすぎてからだ。
段取りに落ち度が無いか、もう一度頭の中を整理してから、白川次郎へ電話をかける。
沖田の運転するリムジンの中で、白川は携帯を取り出し、着信画面を見て、犬養である事を確認してから通話ボタンを押した。
「まもっちゃん、元気?」白川は、弁護士とか、俗に「先生」と呼ばれる人間に対しては、
必ず渾名をつけて、軽く呼ぶクセがある。反骨精神の塊の様な白川らしい。「白川さん、ニュースはご覧になりましたよね?」
「ああ。鬼頭は兎も角として、黒崎もやっちまうたあ、思わんかったぜ」
「ええ。少し早まりましたが、予定どおりという事ですね」
「まあな。会長の遺言の内容を知ってるのは、これで、あんたと俺だけになっちまったって事だな」
「ええ。今日のうちに、葬儀の段取りは済ませます。出棺は明日でいいですね」
「ああ。主だった連中だけでいいぜ。他の連中には、後で大々的に葬儀を開くと伝えてくれ」
「承知しています。
すでにメールと電報の手配は済んでますから。死んだ人間が多すぎるので、合同葬儀にしますけど」
「とりあえず、跡目を早くはっきりさせんとな。
混乱する。関西系の組が、どさくさに戦争ふっかけてくる事も考えられるからな」
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