第1章

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その十二人のうち、四人殺したところで、針を撃たれた男二人は、銃で撃たれて倒れる。 雹は、残り八人全員を短針銃で撃った。撃たれた内の二人の男が雹に気づき、銃を向けて撃つ。 しかし雹は、撃つ瞬間の男達の氣を察知して、当たり前の様に避ける。 驚愕の表情を浮かべた時には、他の銃を持った男達に、めちゃくちゃに撃たれ、二人共即死した。 そして残った六人の虚ろな男達は、一番奥の大広間へフラフラと歩いてゆく。障子を開けた途端に、鬼頭が機関銃をぶっ放す。 次々に六人の男達が倒れていく。そして機関銃の弾を全弾撃ち終わった鬼頭は、銃を放り投げ、 自分の後ろに立っている黒崎竜三に 「あれっ?あいつら、敵じゃないですよ。この屋敷にいた奴らです・・・一体、どうなってるんでしょうか??」と言った。 黒崎は、先程から感じていた、不気味なオーラを放つ人物を推量していた。 そして、すっと足音もなく大広間に入ってきた人物を見て、慄然とした。 「お前は、焔武か?・・・いや、違うな」黒崎は目の前の男の発する氣を感じ、 いつも会っている武とは明らかに別人である事に気づく。鬼頭は、にこにこしている雹を見て「誰だ?お前?」と訊く。 「お会いするのは二度目です。もっとも、あの時は私は能面を被っていたので、顔を見せたのは初めてですが」 雹は、そう言い放つと軽く会釈をした。「お前が、雹か・・・」「はい」と、雹は微笑みを絶やさない。 「誰に頼まれた?」「頼まれたのは白川さんですが、頼まれなくても近いうちに山王会の鬼頭派は皆殺しにする予定でしたから」 「何故だ?・・・何の為に、こんな事をする?」 「まあ・・・一つは、ヤクザ世界の閉塞感を破る為です。白川くんに、山王会を任せてみても、面白いと思いまして」 「面白い、だと?」鬼頭は、雹の言葉を訊きながら、底知れない恐怖が、腹の底から湧きあがってくるのを感じていた。 目の前の、優しく微笑んでいる存在が、この世のものとは思えない。「お前は、一体・・・雹、お前は、焔雹なのか?」 「さて。どうですかね」そう言いながら、雹は鬼頭に針を打ち込んだ。黒崎は、鬼頭の異変に気づく。 急いで床の間に飾ってあった日本刀を手に取り、懐から拳銃を取り出した鬼頭に刃先を向ける。 「おい!鬼頭!しっかりせい!・・・雹!お前一体、鬼頭に何をしたんだ!」
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