第1章

6/38
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
  第三章 無月  白川次郎は王龍と意気投合してしまっていた。昨夜も最高級レストランでごちそうになり、 今朝は、最高級の薬膳料理の店へ連れて行かれた。昨夜、王龍の用意した中国美女を抱かなかった事を聞いたのだろう。 王龍なりに気を使ったのだ。 そして朝十時から、薬膳料理をゆっくり食べながら、今後のビジネスについて色々と話をしていた時、 白川と王龍の携帯電話が同時に鳴った。それぞれの護衛の一人が代わりに出て、今、大事な話の真っ最中だから後にしろ、 と言っているが、相手は緊急の用事だと譲らない様だ。 白川が、「誰からだ?」と訊くと 「黒金さんからです。至急、お耳に入れておきたい事があると言っています」と、答える。 「わかった」白川は、すまない、というジェスチャーを王龍にすると、どうやら王龍のほうも同じ状況の様だ。 「なんだ。こんな時に」「白川さん!大変ですよ!」「でかい声出すな!昨日しこたま白酒(バイチュウ)を飲まされたんだ!」 と言ってから、傍の護衛に「おい!今のは訳さんでいい!」と慌ててたしなめる。(わからんのか、こいつらは!) 「山王会会長の黒崎が、殺されました!」白川は一気に目が覚めた。「本当か!?」 「はい。それだけじゃないっす。若頭の鬼頭も、それから、主だった幹部連中も、みんな殺されました!」 「どこの組がやったんだ?」「それが・・・仲間割れだそうです」「ハア?・・・おいおい。そんなわけがないだろ?」 (・・・雹か?)「本当です。今、詳しい現場検証の真っ最中ですけど、警察の鑑識に潜り込ませてるスパイからの情報ですから 間違いないっす」「分かった!よく知らせてくれた!後の事は宜しく頼む。俺は、なんとか王龍を日本へ連れていく」 「わかりました!早く帰ってきてくださいよ!」 「ああ。しっかりな!」白川が電話を切ると、丁度王龍も、 内輪の話が終わった所だった。王龍から話を始めた。 「日本に居るうちの者から連絡がありました。山王会の黒崎と鬼頭が死んだそうです」 「!・・・私の今の電話も全く同じ情報でした」「そうですか・・・白川さん」「はい?」 「私を日本へ連れて行ってくれませんか?」「えっ?」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!