扇風機

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夏休みに入って最初の日曜日。 今日は午後から友だちと買い物に行く約束をしている。 なのに、着て行こうと思っていたワンピが見当たらない。 いくら探しても見つからないということは、ひょっとして冬物に紛れて片付けられてるのかも? 私は暑いリビングで、押入れの中を探すことにした。 リビングのエアコンは昨日から壊れていて、修理に来てくれるのは一週間後だそう。 汗だくになってごそごそあさっていると、奥の方に『冬服』と書かれたダンボール箱を見つけた。 それを動かすと更にその後ろにもうひとつ箱があって、『扇風機』と書いてある。 なんだ、扇風機あるんじゃん。 私は服の入った箱と一緒に、扇風機も引っ張りだした。 まずはこの暑さを何とかしなくては。 箱から出した扇風機は、博物館から持ってきたのかと思うほど古ぼけたものだった。 とても重い。 真鍮色というのだろうか、鈍い金色はところどころ黒ずんで、固そうなボタンのついた台座から伸びたぐんにゃり曲がった金属の支えが、羽根のある上の部分を支えている。
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