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私はコンセントを差し込み、「入」と書かれたスイッチを押してみた。
古めかしい扇風機のモーターが唸りを上げ、羽根がゆっくりと回り出した。
ほんわりと緩い風が、私の頬を撫でる。
汗を掻いてべたべたした肌には、生ぬるい風でも心地よい。
顔を突き出して涼んでいると、小さいころに田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに行ったことを思い出した。
お風呂あがり、一歳違いの弟の孝典(たかのり)と先を争って扇風機の前の場所を取り合ったっけ。
あの頃はあいつも可愛くて、私の後ろばっかりついてきてたのに。
小さいころの弟を思い出して思わず口元が綻ぶ。
今では真っ黒に日焼けした高校球児になっちゃって、可愛らしさの欠片もないけど。
そんなことを考えながらふと見ると、箱にうっすら何か書いてあるのに気がついた。
消えかかった角ばった文字を苦労して読んでみると、そこには
「この扇風機の前で喋ってはいけない」
と書いてあるのがわかった。
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