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気の合う二人
カリン島からそんなに離れていない海辺で撃墜されたモビルアーマーを修理している男がいた。
ジオンから亡命して行く当てもない旅を続けているカイトである。
旅を続けるための移動手段として撃墜されたモビルアーマーを拾ってはみたものの修理はいまいちうまくいかない。
カイトが少しイラついていると、感に触るような盛大な爆音を上げてバイクが近づいてきた。
プスン、プスン、ガクガクとイヤな音をさせてバイクは停まった。
「へへ~、面白そうなことをやってるな。直るのかい?」
興味津々なカンジでカイトの了解も得ずに勝手にモビルアーマーの修理を手伝い出したこの男は、やはり戦争後に軍を抜けて当てもない旅を続けているヒロミである。
盗んだバイクも調子が悪く、しかも燃料はほとんど残っていないので、あわよぐ自分もモビルアーマーに乗せてもらって旅を続けようと勝手に修理を手伝い出したのだ。
メカの構造をきちんと分析把握してひとつひとつ慎重に作業をするカイトとは反対にヒロミは思いつきでメカをいじっていく。
「何てガサツな作業だ。設計や構造を理解してきちんとした仕事ができないのか」
眉間にシワを寄せて険しい顔をしているカイトとは対照的にヒロミは口笛を吹いてお気楽にしている。
「キミも細かい男だね~。あんまり細かいことを言ってると女のコにモテないぜ。まあ気楽にやろうぜ」
ヒロミはフレンドリーにガムを差し出した。
「お、おう」
カイトは戸惑いながらガムを受け取った。
たった今出会ったばかりなのに、なんなんだ、このフレンドリーさは。こんな男には初めて会った。
ヒロミは悪びれることもなくガサツに機械をいじっていく。不思議と機械はきちんと動くようになっていく。
勘が当たっているのか、実は天才なのか・・カイトは溜め息をつきながらヒロミの作業を見守っている。
いよいよモビルアーマーの修理はメインエンジンを残すのみとなった。
カイトの理論的にもヒロミの直感的にも完璧に直っているはずなのに、メインエンジンはさっぱり始動しない。
カイトは努めて冷静に機械を分析し始めたが、ヒロミはあちこちを蹴ったりハンマーで叩いたりする。
「お、おい、乱暴にするな」
「大丈夫だって、旧世紀から伝わる秘伝の方法なんだから」
がさつで原始的な人間の行動が功を奏するということは旧世紀からよくあることだ。ただし、この場合は功を奏すると言ってよいものかどうか・・・。
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