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「あんずも考えることあるんや」
相手の表情は読めないから、いつもどおりを装って、慎重に言葉を紡ぎだす。
「そりゃ、もう考えることばっかりやで」
やんな、とやんわりと共感する。
いや、この場合共感はおかしいな、自分が振った話なのだから向こうが共感してくれたってわけだ。
「なんか、もう来年就活ってことが考えられへん」
わたしのつぶやきにごそっと、ベッドが振動して、あんずが仰向けの状態からこちらに身を向けなおしたのがわかった。
「そやで、うちらもう一年半後には社会人なんやで」
「なんか、想像つけへんねんけど。自分が働いてるところ」
「百々海は就きたい職業とかあるん?」
ない、と即答するとあんずはククッと笑った。
「いっつも言うてるもんな、かわいかったら専業主婦にもなれるのに!って」
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