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茜side
警官が数人こっちに走ってくる姿を見て、私は真っ暗になった。
そりゃそーだよね。修学旅行なのに、中学生を撃退して、ベンチで酒盛りなんて…。強制送還されるのかな?
「誰だ、チクったのは?」浦西くんが怒号を浴びせた。
野次馬達は蜘蛛の子を散らすように退散する。
「逃げるぞ。」裕の声と共に誰かに手を引かれた。
はぁはぁ。どれくらい走ったのだろう。
山の中に逃げ込んだのが幸いしたのか、警官の姿は見えない。
「大丈夫か?」ポカリのペットボトルを差し出しながら声をかけてくれる。
はぁ、これが裕だったらなぁ。
「ありがとう。哲也くん。」
そう、私の手を取って、逃げてくれた男の子は、恋人ではなく、夢の中の旦那様であった。
「ここなら見つからないだろう。」
「たぶんね。警官は空ビンを担ぐ宮田くんを追いかけたみたいだから。」
「倉本や三鏡院は大丈夫かな。」
「上月さんが上手く連れ出したみたいね。」
「うちの班は?」
「裕があやめを捕まえていたし、亀井くんが、未来と、陽葵を連れて人混みに消えたから大丈夫なんじゃないかな。 」
「ごめんな、荻窪。」
「ん?なんで?」
「いや、ここにいるのは裕のが良かったんじゃないか。」
「仕方ないよ。あの時、私は裕の側に…。」と言ってはっとなる。なんで私は裕の側にいなかったの?いつもは、あやめと一緒に裕の側にいるのに?なんで私は哲也くんの隣に?
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