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本編
「はぁ、はぁ、はぁ。」俺は必死に逃げた。手をとった女子はあっという間にへばってしまい、いまはおんぶしながら走っている。
いくら彼女が軽いとはいえ、数キロも走れば、流石の俺もへばってしまう。
「ねぇ、もういいんじゃない。」俺の背中で、後ろを警戒していた女子が声をかけてきた。
「はぁ、もうだめだ。」
俺は芝生に倒れこむ。もちろん、後ろの女子を怪我させないように前のめりに倒れる。
「ありがとう。裕ちゃんで助かったわ。」あやめは男性が苦手である。転校前の件が響いているようで、あやめに触れられる男性は、俺と椿だけだ。(蓮華さんも大丈夫そうだが、触ってくれないらしい。 )
「他の奴だったら間違いなくお縄だったな。」
「洒落にならないよ。喧嘩にお酒なんて。」
あやめを降ろした後、上向きで寝っ転がる。
あやめは俺の腕を枕に近づいてきた。
「茜ちゃんじゃなくってごめんね。」
「ふっ、それは言うな。茜も哲也が守ってくれてるんだ。必ず生き残るさ。」
「うん、ありがと。」
「しかし、ここはどこなんだ?」
奈良公園から東に逃げたような気がする。ここは山の中だ。人気はかんじられない。
「暫く休憩しない。酔いが…。」
茜に薦められ、かなりの量を飲んでいた。また鈴鹿川は口当たりが良いので、さらに進んでしまったのだろう。
「そうだな。ここなら誰もこないだろう。」と言ってあやめの頭を撫でる。
疲れと、酔いに負けたのか、あやめはすぐに眠りについた。
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