天下無双の修学旅行

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ぐさり。 右手の痛みで目が覚める。左で眠っているあやめを起こさないように、辺りを見回す。 どうしよう…。既に真っ暗である。 ぐさりぐさり。右手に更なる激痛が。 見ると地面から爪が生えて右腕に突き刺さっているではないか!。 視界に入るエリアには姿は見えない。 「あやめちゃん。」「ううん、あと5分。」 「あと五分じゃない。起きろ!」 寝坊助をたたき起こす。 目を擦りながら辺りを見たあやめもやはり真っ青になる。 「ち、ちょっと、今何時なのよ?」 「たぶん7時位か。それよりこれ。」 「なに、茜ちゃん?どこから?」 辺りを見回す。視力が人よりも優れているあやめ。 「あっ、あれじゃない。」俺には見えないが、あやめの指す方に歩き出す。 そこには、哲也の腕を枕に心地よく眠る恋人であった。 「ゆ、裕ちゃん?」心配そうに見てくるあやめ。 ほぅ、俺があやめを腕枕していたから爪で攻撃してきた茜が、哲也の腕枕で眠っているとは? 「疾きこと風の如く。」茜の首筋に息を吹き掛ける。 「ひひゃひゃぅ。」こそばさに飛び起きる。 徐かなること林の如く。素早く腕をとり、ぞうきんをかける。 「きゅうきゅう。」呻き声をあげる茜。 「侵略すること火の如く。」 肺に一杯の空気をため、体内で熱して、茜の片口に吹き掛ける。 「あ、あつーい。」 「動かざること山の如し。」最後はお待ちかねの「富士山」を茜の右手に決めてやる。 「きゅうきゅう。裕のばかぁ。」涙目で手の甲を擦る。 「お前が先に爪を刺したからだろ。」 穴ぼこが空いた右手を見せる。 「裕があやめを腕枕してたからじゃん。」 「じゃあ今何していた?」 自分が寝ていたとこを見る。哲也の腕から、茜の残り香が…。 「てへっ」といって舌を出すポーズをする茜。 ほぅ、そんなことでごまかせるとお思いか? 茜の柔らかなほっぺを摘まんで「縦縦横横丸書いてチョン」を決めてやった。
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