本編 序章

5/7
前へ
/118ページ
次へ
 キッドが放った速い右のローキックを、左の腿に受けた丈が、僅かによろける。その隙を突いて、すぐさま丈の身体を掴んだキッドは、相手をロープへ振ると共に、自らも走り出した。  キッドはロープの反動により、向かい側から跳ね返ってきた丈に合わせて飛び上がると、高い打点のドロップキックを放った。  胸の辺りでキックを受けた丈が、呻き声をあげながら後ろに倒れる。それを見たキッドは、着地した直後に素早く立ち上がると、倒れたままの丈に駆け寄り、その巨体を掴み起こした。続けて相手の背後に回る。  丈のバックを取ったキッドは、相手の腰に両腕を回すと、へその辺りで両手をがっちりとロックした。そのまま丈の身体を後ろに持ち上げて、ジャーマンスープレックスを仕掛けようとする。  だが次の瞬間、丈の反撃がキッドの顔面を襲った。相手の身体を背後から抱えたままの状態で、強烈な右エルボーを喰らわされたキッドは、頭に受けた激しい衝撃に耐えきれずによろけた。そして丈の身体を離してしまう。  その隙を突かれて、逆にバックを取られたキッドは焦るが、丈は丸太のような両腕で、腰の辺りをがっちりと掴んできた。そのまま凄まじいパワーで、高角度のバックドロップを仕掛けてくる。  不吉な浮遊感を覚えながら、後ろに向かってぶん投げられたキッドは、受け身を取ることも出来ずに、首からマットに叩き付けられた。  後頭部にかなりの衝撃を受けてしまったキッドは、どうにか立ち上がろうとはするものの、脳震盪を起こして再び倒れ込む。  ――クソッ……このままじゃまずいっ。頭に残ったダメージにより、なかなか立ち上がれずにいたキッドは、丈に身体を掴まれ起こされた。続けざまに荒々しくロープへと振られたキッドに、向かい側から勢いよく走り込んできた、丈の豪腕ラリアットが襲いかかってくる。  そうはさせるかと、なんとか頭を下げてそれをかわしたキッドは、そのまま目の前のロープに向かって走った。キッドは続けてロープの反動を利用すると、反対側から同じように跳ね返ってきた丈のほうへと駆け寄っていく。  そして跳び箱を飛ぶように高く飛び上がったキッドは、迫りくる丈の首をがっちりと両足で挟むと、高速で身体を後ろに反りながら、捻りを加えて投げ飛ばした。  キッドが得意とする、ハリケーンラナを喰らった丈は、もんどりうってマットに倒れた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加