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自分より先に立ち上がった丈により、掴み起こされたキッドは、観客に向かって行くぞと叫んだ丈に、バックを取られる。
そしてキッドは、丈の強烈なジャーマンスープレックスを二連発で喰らわされたあと、とどめの豪腕ラリアットで首を刈られた。
丈の必殺コンビネーションをまともに受けてしまったキッドは、その後のフォールを返すことが出来ずに、カウントスリーで敗北した。
勝敗が決した体育館には、勝者である丈を讃えるコールが、いつまでも響いていた。
大きな試合を終えて、同好会の部室に戻ったキッドこと坂口は、自分を倒した丈から声を掛けられた。
「フッ、まだまだだな、拓」
「ちっ、うるせえよ」
不敵な笑みを浮かべながら言った丈に対して、坂口はそう毒づくことしか出来なかった。
その後部室に入ってきた彼女の恭子も、坂口に慰めの言葉を呟く。
「拓ちゃん惜しかったね、もう少しだったのに」
「いや、俺はこのままじゃ、あいつには勝てねえよ」
この日の試合により、改めて丈との力の差を痛感させられた坂口は、なんとか丈に勝つ方法はないかと考えていた。
――チクショウ。あそこでドラゴンを仕掛けちまったのが、今日の敗因だ。ちょっと焦り過ぎたか……もっとじっくりと攻めるべきだった。でも、やっぱりあいつを倒すには、本場のメキシコで修行するしかねえよな。俺はいつの日か、あいつに勝ちたい。
拳を固く握り締めながら、そう思った坂口は、再び丈に負けた悔しさを、いつまでも噛み締めていた。
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