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龍一が照れ隠しに、右手に持ったワインをかかげて、
「飲むだろ?」
と再び尋ねれば、今度は美百合も素直にうなずく。
その仕草があまりにも可愛くて、
『このままじゃ美百合に主導権を握られてしまうな』
と慌てて気を引き締める。
『そうはいくか』
龍一がワインを口に含み、口うつしで美百合に含ませてやると、コクリと音をたてて美百合の喉が悩ましげに鳴る。
美百合の唇から零れたワインが、美百合の白い喉を玉になって伝っていく。
もうそれだけで、先手も主導権も、どうだってよくなってきた。
美百合の身体をベッドに押し倒す。
美百合は変わらず龍一を見つめている。
龍一は美百合の耳元に唇を寄せると、そっとささやいた。
「美百合。今夜はお前に決定権をやろう」
龍一の何もかもにうっとりと酔いしれた様子の美百合は、潤んだ瞳で龍一を見上げてくる。
果たして、この最高の日の締めくくりに、一体どんなすばらしいものを贈られるのだろうと、期待に満ちた眼差しで龍一の次の言葉を待っている。
この美百合の愛しい表情を、いつも違う顔に変えてやりたくなるのは、なぜだ?
龍一は、美百合の耳元で意地の悪い声で、プレゼントの意味を教えてやった。
「俺はお前に何もしない。だからお前が俺を求めて、この白いバスタオルを外せよ。そしたら俺の全部をお前にやる」
――美百合の全身はとたんに赤面――
こんな意地悪だけは、どうしたって止められない。
Fin
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