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昔々、世界の平和は地の底から現れた悪魔によって突如として破られた。
悪魔は破壊の限りを尽くし、また、人々の心を惑わしては彼の下僕としていったのであった。
だが、その彼の悪行も精霊使い達により阻められた。人々はその勇敢な戦士達を心より讃え、やがて精霊使いは英雄として人々を守り、世界を救うため日々魔物を討ち滅ぼしていったのである。
それを面白いと思っていなかった悪魔はある日、一人の精霊使いに尋ねた。
「おい戦士よ。なぜ貴様は人間としてではなく、戦士として生を全うするのだ。」
それを聞いた精霊使いは、我々は精霊と共に生きる道を選んだその時点から、人としての運命の鎖から外れたのだ、と答えた。
悪魔は一笑すると、こう言った。
「お前達は人間としての誇りを忘れ、まるでアリの如く民のために働くのだな。」
人間としての誇り、という言葉はまるで蛇のようにその精霊使いの心に絡み付き、やがて彼の良心は毒に溶かされるがごとく日々失われていった。
ある日、その精霊使いは悪魔にこう言った。
「私はもう、戦士として人々のために生きるのは疲れた。私は戦士といっても下級の戦士で、毎日雀の涙ほどしか食べるものは得られないというのに、あの恐ろしい怪物達の相手をせねばならぬ。人々は英雄として我々を讃えるが、彼らは自分たちの今の状況に満足している。彼らが無力な人間であり続ければ、我々に守られていればいいのだし、仮にもし殺されたりしても、彼らには我々精霊使いという大きな盾があるのだ。一体、戦う意志のない彼らのために我々がどうして救いの手を差し伸べなければならぬのだろうか?いや、彼らは内心嘲笑っているのだ。いつ終わるやも分からぬこの戦いを、まるで、そうだ、それこそ蟻が馳走を細かく噛みちぎって巣の中に列をなして運んでいくのを見るかのような目で眺めているのだ。もはや彼らにとって我々は、いや、この戦いは蟻の行列のようなものなのだ。」
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