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それを聞いた悪魔は、その精霊使いの手を取りこう言った。
「もしもお前のその心が私を求めるのならば、私はお前の言葉に耳を貸そう。もしもお前の心が救いの手を求めるのであれば、私はお前の手を決して拒まぬ。」
精霊使いが悪魔の手を握り返し、深く頷くと、彼らの頭上には暗雲が渦巻き、日の光を遮った。
それからというもの、悪魔と精霊使いとの戦いはいっそう激しくなり、その戦火は世界の果てにまで及んだ。
しかし結局悪魔は精霊使い達に敗れ去り、彼は深い深い地の底まで再び封じられる事になったのである。
封印される際に、悪魔は人間にこう言い放った。
「鏡を真実だと信じて疑わぬ哀れな命たち。我の肉体はここにはあらず。我の言葉は歌となり鳥達に受け継がれ、彼らがさえずる歌は呪いとなってやがて世界を覆い尽くすだろう。」
人々がその言葉の意味を理解する間もなく、悪魔の呪いは瞬く間に広まり、やがて彼の言葉通り世界は再び闇に包まれた。
大地は涸れ麦の穂は毒を孕み、空からは酸の雨が降り注ぎ、海は死の胃袋と化した。
歌をさえずる小鳥達はもうおらず、代わりに屍肉を貪るカラスやハゲタカだけが大空を舞っていた。
人々は嘆き悲しんだが、やがて彼らの怒りは精霊使い達に向けられた。
英雄として讃えられた筈の彼らの中に一人、裏切り者がいたからである。
そしてかの裏切り者は人々の前に差し出され、惨たらしく処刑されたが、その心臓は止まる事無く動き続けたという。
彼を殺す術は無く、人々は仕方なくその罪人を牢につないだ。
ある日その罪人は人々の目を盗み牢から逃げ出したが、たどり着いた先は砂が舞い、屍で埋め尽くされた荒野だった。
荒野に眠る屍の山達に、罪人は乞うた。
「お前達に私の命を預けよう。どうか私の生を終わらせておくれ。」
ある日そこを通りかかった旅人が、遠くから赤ん坊の声を聞いた。
こんな所で珍しい、と思った旅人が駆け寄ると、その赤ん坊は荒野に眠る屍の山に埋もれていた。
吹きすさぶ風が砂を巻上げる中、未だ目も開かぬその血塗れの赤子の鳴き声は、虚空に響き渡り、そしてそれに答えるかのように、空には暗雲が立ちこめたという。
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