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林は少し戸惑った顔をした後、にへらと笑って言った。
「あ、はい。『ありがとうございます』」
やったー。これで脱げる。
ビリッ
パーン! ビリビリビリビリッ
いきなりすぎる開放感。魔法少女の服は2、3センチくらいの木っ端みじんに破けちった。
「「え?」」
ヒラヒラとピンクの布切れが舞い散る中、林と目が合った。
林の視線が上下にチラチラと揺れた。タレ目の瞳がパチクリしている。
私はパンツ1枚のすっぽんぽんになっていた。
「イヤー!!! 見ないで!」
何が清純な魔法少女……だ!
とにかく両腕で胸を隠す。林が言った。
「だ、大丈夫ですよ。あの、大丈夫です」
「大丈夫じゃないから!」
「綺麗なんで、綺麗なんで……大丈夫ですって!」
綺麗。
少し喜びかけて我に返る。
「ばか! コメントいらないから早く出て行ってー!!!!」
林は何か言おうとしていたが、その度に遮って言わせなかった。
『心が大きい』とか『優しい』とかアレコレ言われたけどそれどころじゃない。
なんとか追い出した後、私は床に散らばった“魔法少女になれるドレス”だった布を集めてキッチンのコンロで全部燃やした。
もうやだ。
白猫はいつの間にかどこかに消えていた。
全部夢だったらよかったのに。
会社の後輩にとんでもない服見られるし、
すっぽんぽん見られるし
なんだと思っただろ。私のこと。
別にいいけど。ただの後輩だし。
でもほんのちょっとだけアイツのことかっこいいと思ってたのに……
ふとキッチンのすりガラスの窓を見た。
3センチくらい空いた隙間から侵入してきていた、毛むくじゃらの小さな白い腕。肉球。外から声が聞こえた。
「メグミ。実はあのドレスの本当の効果はいい男と良縁を――…」
窓を開けようとしていたそいつを全力で追い出して鍵をかけた。
服を着てからドアを開けると1枚のメモが挟まっていた。
『よければ今日一緒にランチ行きませんか? 林』
【魔法少女】
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