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「――…イ……セン……」
なに?
誰かが私を揺さぶってる。
「――…センパイ!」
(はやし)
びっくりして目を開けると、林が私を見てにへら、と笑った。
いつの間にか寝ていたみたいだ。床に座ってソファにもたれて寝ていたので、腰も背中も首も痛い。
林が照れくさそうに言った。
「センパイごめんなさい。昨日は迷惑かけたみたいで――…」
かなりね。
でもまあいいや。
林は無事だったし、明るいところでちゃんと見ると綺麗な顔してるし。肌は綺麗だし鼻筋も通ってる。タレ目に涙袋もいいし。
(そういえば林のことかっこいいって受付の子が言ってたなー。営業成績もいいし)
「ううん。いいの。でも、言うべきことは言ってもらうわよ」
『ありがとう』って言って!
「え! 言うべきことですか?」
林は言いにくそうに、私をチラチラ見て言った。
「それってその……その服のことですよね……?」
「服?」
気がつけば私はコートを着ておらず、魔法少女の服1枚だった。
ぷりっとしたパールピンクの幼女風のドレス。
「橘センパイのイメージとは違うけど……まあ、可愛らしい服だと――…」
「い、嫌ー! なんで!? なんで!?」
慌てて手で隠したけど隠れきれるわけもなく、時すでに遅し。朝の光の中で見たら尚更痛い。私は膝を抱えてできるだけ服を隠した。
「すんません。コートのまま寝てたんで、シワになったらいけないと思って……コート高そうだったし」
「高いけど! 違うの。これは違うの! 変なのじゃないの!」
泣きそう。
「いや。あの……センパイ……」
「誰にも言わないでね! 違うの、本当に!」
「わかったんで……足、おろしてください」
林の視線の先に気が付き、私は慌てて足を下ろした。膝上20センチのばか!
「イヤー! ごめんね! でもワザとじゃないの!」
しかし脚を下ろすと服が丸見え。
「もう! お願いだから早くありがとうって言って終わらせて! 林!」
林の肩を掴んで揺さぶる。
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