魔法少女

10/11
前へ
/11ページ
次へ
「――…イ……セン……」 なに? 誰かが私を揺さぶってる。 「――…センパイ!」 (はやし) びっくりして目を開けると、林が私を見てにへら、と笑った。 いつの間にか寝ていたみたいだ。床に座ってソファにもたれて寝ていたので、腰も背中も首も痛い。 林が照れくさそうに言った。 「センパイごめんなさい。昨日は迷惑かけたみたいで――…」 かなりね。 でもまあいいや。 林は無事だったし、明るいところでちゃんと見ると綺麗な顔してるし。肌は綺麗だし鼻筋も通ってる。タレ目に涙袋もいいし。 (そういえば林のことかっこいいって受付の子が言ってたなー。営業成績もいいし) 「ううん。いいの。でも、言うべきことは言ってもらうわよ」 『ありがとう』って言って! 「え! 言うべきことですか?」 林は言いにくそうに、私をチラチラ見て言った。 「それってその……その服のことですよね……?」 「服?」 気がつけば私はコートを着ておらず、魔法少女の服1枚だった。 ぷりっとしたパールピンクの幼女風のドレス。 「橘センパイのイメージとは違うけど……まあ、可愛らしい服だと――…」 「い、嫌ー! なんで!? なんで!?」 慌てて手で隠したけど隠れきれるわけもなく、時すでに遅し。朝の光の中で見たら尚更痛い。私は膝を抱えてできるだけ服を隠した。 「すんません。コートのまま寝てたんで、シワになったらいけないと思って……コート高そうだったし」 「高いけど! 違うの。これは違うの! 変なのじゃないの!」 泣きそう。 「いや。あの……センパイ……」 「誰にも言わないでね! 違うの、本当に!」 「わかったんで……足、おろしてください」 林の視線の先に気が付き、私は慌てて足を下ろした。膝上20センチのばか! 「イヤー! ごめんね! でもワザとじゃないの!」 しかし脚を下ろすと服が丸見え。 「もう! お願いだから早くありがとうって言って終わらせて! 林!」 林の肩を掴んで揺さぶる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加