魔法少女

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ベッドの横の鏡に映ったのは小学生のような服を身にまとった痛々しい成人女性。 まごうことなき私の姿だった。 隣にいるドヤ顔の白猫が自分の口のまわりをペロッと舐めてから流暢な人間語で言った。 「これは“魔法少女になれるドレス”。これでメグミは今日から魔法少女だよ」 「魔法……少女……っていうか……」 膝上20センチくらいのパールピンクのふわふわのドレス。素材はテロテロサテン。 スカートはカボチャみたいにふわんとしていて、肩のところもぶわんと丸くなっている。手には白い手袋。 髪はポニーテール。髪には大きなピンクのリボンがくっついている。 「私もう24歳なんですけど」 ****** ――…会社帰りに白い猫を拾った。 道の端でぐったりとしていた。外傷はなかったし、ガリガリだったのでコンビニで猫のごはんを買ってあげた。 家で適当な器にドロッとしたごはんを入れて白猫に差し出す。 「ほら、お食べー」 むくっと起き上がった白猫はガツガツと食べだした。よしよし。やっぱり空腹か。 一心不乱に腹を満たす白猫を見ていたら急に白猫が顔を上げてこっちを見た。なにか言いたげな瞳に思わず問いかけた。 「……なに?」 白猫が真ん丸な目で私を見ながら流暢な人間語で一言。 「助けてくれてありがとう。お礼に魔法少女にしてあげるよ」 「まほ……え……?」 ドッキリか。夢か。 フリーズした私の目の前で白猫がすっくと二本脚で立ち上がり、口を大きく開けて天に向かって言った。 「橘 恵実(たちばなめぐみ)を! 魔法少女に!」 (私の名前!!) ガクン、と身体が揺れる。ぎゅっと目を閉じて身構えたが特にそれ以上は何も無かった。 恐る恐る目を開ける。そこは自分の見慣れた部屋。ゴハンの続きを食す白猫。 ただ1つ変わっていたのは…… 私がふりふりの珍妙な格好に代わっていたこと。 それとさっきまで着ていた、先日百貨店でリボ払いで買ったばかりの上下セット5万円の美ラインスーツが木っ端微塵に破れて床に散らばっていたことだった。 (まだ支払い3万円残ってるのに……!)
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