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とりあえず一刻も早くこの寒々しい衣装を脱ごうと首の後ろに手をやった。
あれ。
ホックが無い。
そのまま脇の下を探す。ない。
ホックが無い。服はピッタリ過ぎて上からも下からも脱げそうにない。
ベッドの上で毛づくろいを始めていた白猫に尋ねた。
「これどうやって脱ぐの?」
顔を上げた白猫はドヤ顔で答えた。
「脱げないよ! 清純な魔法少女が敵に服を脱がされたらいけないからね!」
「…………いやいやいやいや」
もういいや。そう思ってキッチンに行って料理バサミを引き出しから取り出して、そっと襟にハサミを入れた。
(白猫、ごめんね。でもこれ脱ぎたいの)
あれ。
全く切れない。
思い切り力を入れても、1ミリも切れない。ただのテロテロのサテンのはずなのに。
いつの間にか私の後ろにいた白猫の声が聞こえた。
「切れないよ! 超合金で編んでるからね。清純な魔法少女が敵に(以下略)」
どうするんだ。
キッチンの電子レンジのドアに反射して自分の姿が映って悲しくなった。
今日まだ月曜日なのに……。
明日は会社だ。
ラブとは縁遠い、独り身の私は他の人より頑張って働かねばならんのだ。
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