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私は正座して白猫に聞いた。
「これ……どうやったら脱げるの?」
再び二本脚で立ち上がった白猫は身振り手振りしながら答えた。
「人助けをし終えたら脱げるよ! 魔法少女の仕事は人助けだからね!」
人助け……。この家に住むのは私だけ。他に人はいない。いるのはこの白猫だけ。
「それ以外に脱ぐ方法は? 明日会社だし脱げないと困るんだけど」
フワフワすぎるラインのせいで、上からスーツを着てもごまかせそうにない。肩パットを入れてパニエをはいているみたいになるだろう。
どっちみち社会人としてアウトだ。
二本脚の白猫はドヤ顔で言った。
「無いよ! だって清純な魔法少(以下略)」
「……魔法で脱げないの?」
魔法少女というのなら魔法は使えるんだろう。白猫が自分の狭い額に前足をぺたりとつけてため息をついた。
「ダメだよ……服を脱ぐなんてそんなハレンチな魔法!」
「私のスーツビリビリに破いたくせに。まだ支払い残ってるんだけど」
白猫はうつむいてふるふると震えていた。
(泣いてる?)
「……なによ。だっていきなり困るでしょ。こんな――…」
「ばか!」
白猫の肉球がぽふんと私をビンタした。
「このばか! 変身シーンで服がビリビリに破けるのはお約束だろ!」
大声の白猫。
……どうしよう。
言葉は通じるのにこの猫とまるで話が通じない。
「とりあえずこの服脱ぎたいんだけど」
私がそう言うと、白猫が四つんばいに戻って玄関に歩いて行った。
そしてくるりと振り返った。
「よし、メグミ! じゃあ今からさっそく人助けだ!」
想像した。
幼女の変身グッズのような服を着た24歳の女が夜の22時に住宅街を徘徊。
……白猫を引き連れて。
もしこの世界に他に魔法少女がいるのなら
今すぐ私を助けてください。
「ほら! メグミ、行くよ! コートなんていらないいらない」
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