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ひとけのない夜の住宅街。ベージュのロングコート(リボ払いで支払い中)で歩く女。
コートのボタンをきっちり閉め、ソワソワと落ち着かない様子で歩く。
コートの中は………
魔法少女のコスプレ。
隣にいた白猫が私を見上げて言った。
「いいね。初出動だね! なんだかビデオに残しておきたいなあ」
「別のビデオみたいだからやめて」
私は小さな声で白猫に言った。
「……助けようにも誰もいないじゃん。もう終わりにして脱がせてよ!」
白猫がドヤ顔で言った。
「甘いなぁ。もうすぐ困った人が現れるよ。ほら、前を見てごらん」
言われるがまま前を見た。前の方にいたのはスーツ姿の1人の男。その若い男は胸ポケットに手を突っ込んで「うわ!」と声を上げた。
そのままパタパタと自分の尻ポケットやカバンの中を探り出した。その場にしゃがんでカバンの中を引っかきまわしている。
遠目で見てもわかるくらい困ってるけど……。
白猫がチラリと私を見て言った。
「ほら。助けなくていいの? 彼はスマホを無くして困ってる人だよ」
「地味だな! いいけど!」
敵に脱がされたら~とかいろいろ言ってたけど、もはや敵なんていないじゃん。
でもスマホ見つけるくらいなら楽そう。
「なんでもいいけど、あの人のスマホを見つければ終われるんだよね?」
彼に駆け寄ろうとした私に白猫が目をキラキラと輝かせて言った。
「やっぱり君は思った通りの人だ! 困った人を助けるのがだいすきなんだよね。僕にもそうだった!」
「死ぬほど後悔してるからもう2度と野良猫に関わらない」
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