魔法少女

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林が少しうつむいて言った。 「それで俺……次に誰かと付き合う時は胸の大きさとかじゃなくて…… 心の大きさで見ようって。だって人って――…」 「スマホは?」 どうしよう。もう林は無視して他の人に行ったほうが早いかな。でも人通りないし……。 林は言った。 「これからです! それで俺は思ったんですよ。 心機一転がんばろう。もう今まで付き合った子の連絡先とか全部消そうって アイコもユリもミサキもカレンもナツミもリサもみんな心は大きくなかった……」 心はってことは胸は大きかったのかよ。思いがけずこだわり知ってドン引きだわ。 「そして俺は……エイッて。すべての思い出を川に流しました」 水没。 「もう無理だね」 いきなり林がその場に崩れ落ちた。 「ああああ……きぼちわるい……もう歩けない……今日はここに野宿します……」 「わかった。じゃあ明日会社でね」 私が林から離れて歩きだしたとしたところで、塀の上から白猫が耳打ちしてきた。 「……林くん……死んじゃうかもね。 急性アルコール中毒かな……凍死かな…… それとも車に轢かれちゃったりして……」 「そんな大袈裟な」 振り返ると、林は車道の真ん中で倒れていた。黒いコートを着ているせいでよく見ないとわからない。 「このあたり信号ないよね。 街灯も少ないし、もしかしたらこの後林くんは…… まあいいか。メグミには関係ないもんね。知ってる? 寝ながら嘔吐したら嘔吐物が気管に詰まって――…」 私は林のところに戻った。 「タクシー……呼んであげるから住所言いなさい」
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