第3話

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「いえ、こちらこそ何度も連絡してしまって。今日は最後の夜なんで何か美味しい物でも食べたいなと思っていたんですが、良かったらご一緒して頂けませんか?」 唐突すぎる誘いに「今日は見送りに来ただけなので」とバッサリ断られていたが、気にも留めない様子で口を開く。 「じゃあ送った後、佐々木さんとご飯に行ってもいいですか?落ち合う場所約束しておくんで」 「ちょっ、神崎君何言ってるの?」 予想もしてなかった内容に思わず声が大きくなったが、拓斗は少しの間の後「やだ!」と舌を出している。 『こ、子供かよ』 さっきまで余所行きの顔で挨拶していたイケメンとは違い、悪ガキの表情で素を出している。 「でも、昨日お世話した貸しがあるよ僕」 と神崎君は楽しそうにニヤニヤしているが、こちらの子供の方が性悪感があって怖い。 「何食べたいか言えば?」 「こうこなくっちゃ!」 二人で車に乗り込み、私も呼ばれて慌ててドアを開けた。 『この人達のノリについていけない……』 後部座席に乗った私はこれからの展開が全く想像出来なかった。 「イタリアンがいいな、美味しいパスタ食べたい」 拓斗は返事をせず車を走らせているが、神崎君は構わずに話かけていく。 「昨日思ったんだけど、佐々木さん異様に気を遣ってたよ」 「――なんで?」 話題が私になると急に返事をするので、内心ドキッとしてしまった。 「さあ?だからどんだけ言いづらい相手なのか不思議でね、大事な仕事期間だし、大した事ないとかゆーから強引に連絡したぐらい」 ルームミラー越しに拓斗が見てくる視線が突き刺さるように痛い。 「良かったね佐々木さんやっぱ連絡しておいて。俺がもし彼氏ならその日に知らせて欲しいけど、これって普通だよね」 「――普通」 鏡越しから二度目の視線も目が口ほどに物を言ってるように見え、お詫びの言葉が出そうになる。
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