第2章 宛名のない手紙

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右手を突っ込み裏返しになった封筒を掴むと、不思議な程に薄い感触が伝わってきて、中身が空では無いのかと疑った。表を見ると、宛先に自分の名前は無かった。いや、自分の名前どころか誰の名前も無く、それに切手さえ貼られてはいなかった。となると、単なる配達間違いではなく、誰かが意図的に入れたものなのではないか。玲奈は、迷った。このまま開封するか、捨ててしまうのか。はたまた、警察にでも渡すか。 玲奈は、辺りを伺った。しかし、普段から人通りの少ない住宅街は今日も何の変わりもなく、静かな朝の様子が漂っているだけであった。玲奈は、植木のあるレンガに腰を降ろし、黄色封筒を眺め、些細なことでも手がかりになる形跡はと細かなところにまで目を通したが、真新しい封筒には何一つ痕跡は無かった。  そうなると中身が気に掛かってくる。いったい何が書いてあるのか。もしかしたら、他の人宛の名前が書いてあって、この疑問と不安も簡単に払拭されてしまいはしないか。玲奈は、記憶から消したい気持ちを優先させ黄色い封筒を開封した。
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