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「なんでもない」
アールはオレの頭の中を読んだはずなのに、知らん顔をして立ち上がると、再びオレの頭をぽんぽんと叩いた。
だから、そんなことをしてもときめかないって。
アールはオレの頭に手を乗せたままで、唐突に言った。
「そっか。耕太、元気でね」
「えっ?元気でねって、どういう意味?」
「別に意味はないよ。ちょっと忙しくなるのを思い出したんだ」
「それじゃあしばらく会えないのか?」
「そうだね。また来る」
アールは空になったコーヒーの缶をオレから受け取るとごみ箱に放り込み、後ろ手でバイバイと手を振った。
プレイコーナーでは子どもたちも親たちも入れ替わりが激しい。オレたちの話に注意を向けている人は誰もいなかった。
アールは元気と雄太のそばを通ったが、二人とも遊びに夢中で、オレの隣にいた人物に注意も払わなかった。
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