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トイレットペーパー
最近、家のトイレットペーパーが変わった。
シングルタイプ且つ芯のないペーパーで、妻が言うには、巻きが多い分長持ちだし、芯がないからゴミも出なくてありがたいとのことだった。
使い始めは多少の違和感があったが、すぐに慣れて当たり前になった。
今日もホルダーには芯なしのペーパーがセットされている。ただ、随分と量が少ない。
すぐ側に予備があるので、量が少ないことに問題は感じなかった。むしろ、芯なしになってからペーパーを使い切ったことがなかったので、何だが新鮮な気分だった。
穴を覗いたことはあるので、終わり辺りが圧縮加工されていることくらいは知っている。使える部分を固くして芯の代わりにしているのだ。
だけど使い果たす瞬間を見たことはない。
どんな感じだろうかと、残り少ないペーパーを引っ張っていく。すると、紙の上に何やら模様が現れた。
エコを謳い文句にしている筈の品なのに、無駄な模様が描かれているのか?
そう思い、さらにペーパーを手繰ると、うっすらと赤く浮かび上がる模様は紙全体に書き込まれているのではなく、下の部分に書かれたものが透けて見えているのだということが判った。
残り少ないとはいえ、圧縮加工のされた何層にも巻かれた紙の、下層に書かれた絵なり文字なりがこの段階で見えるものなのだろうか。
戸惑いを覚えながらも好奇心が先に立ち、尽きぬ興味のままペーパーを手繰る。するとついに終わりを迎えたペーパーの、最後の二十センチくらいのところにはっきりと文字が現れた。
オ シ マ イ ダ
きちんとした印刷ではなく、赤ペンで書き殴ったような、粗い印象のカタカナ。
見た瞬間に何とも嫌な気分が込み上げて、俺はその部分のペーパーをぐしゃりと丸めると、使いもせずに便器に放り込んだ。
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