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それは、新年の始まり、睦月の出来事だった。
私は、お仕えする戦の神、大皇刀神こと燈羅様の従者として久しぶりに人界へと降りてきたのであった。
きっかけは、「戦の匂いがする」との燈羅様の一言。
天界においても何かと周りに恐れられ、ずっと邸に籠もっておられる燈羅様を外へ連れ出すいい機会だと思い、何かと理由をつけて連れ出した次第である。
始め燈羅様はあまり気乗りしない様子だったが、戦の匂いが色濃く漂う地へ降り立ってからは仕事モードに入り、眉間に深く皺を寄せてしまわれた。
私は単なるお側仕えに過ぎないので、予想される死者数などの具体的なことは分からない。
だが燈羅様の様子からして此度の戦は酷いものであるようだった。
天界における閉塞感を少しでも緩和できたらと思ったのだが、逆効果だったようだ。
私は己の不甲斐なさに嫌気がさした。
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