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近くの公園についた。
桜がオレンジ色になって、なんだか桜じゃないみたい。
あたしはブランコに乗って泣いていた。
「ママぁ。」
「唯羽…ちゃん?」
はっとして後ろを振り返ると、夕日の逆光で最初誰だか分からなかった。
ゆっくりこっちに近づいてくるその人は…蒼くんだった。
「唯羽ちゃん、泣いてるの?」
「…グスッ。」
何も答えられなかった。
沈黙だけが周りを支配してた。
一時して、立ちっぱだった蒼くんが隣に座ってブランコを揺らし始めた。
「僕さ、お母さんしかいないんだ。」
「え?」
「お父さん、僕が生まれてすぐに事故で死んじゃったんだって。だからお母さんしか知らない。」
「そ、そうなんだ。」
「だから、僕、たまに一人ぼっちだなって思うんだ。お母さんは今も仕事しに行ってる。夜はいつも一人ぼっちなんだ。」
「あ、蒼くんは兄弟いないの?」
蒼くんは揺らしていたブランコをゆっくり止めて地面を見ていた。
入園式のあの時みたいな顔で、地面をゆっくり、見ていた。
そして一時してあたしを見て、今にも泣きそうな声で
「うん。」
とだけ言って、またブランコを揺らし始めた。
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