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しかし、どうにも、おかしい。いったい何が起こっているのか。あの、クンリロガンハでの様はどうしたことか。
何か目に見えないものが、ダライアスをどこかに導こうとしているのを感じてやまなかった。
「では、頼むぞ」
いろいろ気になることはあるが、まずは葬儀である。シキズメントにすべてを託し、ダライアスは大聖堂を後にした。
その王城までの帰路、人々は跪いてダライアスを見送った。
「!!」
ダライアスの頭に衝撃が走った。放たれた石が当たったのだ。
石を放ったのは、まだ小さな男の子だった。
「お父さんの敵!」
男の子はそう叫んで。母親は男の子を羽交い絞めにして、ともに地に額をつけて「申し訳ありません!」と必死に叫んでいた。
イムプルーツァは下馬し「おのれ!」と叫んで親子のもとまでゆき、帯剣の柄に手をかけた。
「やめろ!」
「しかし獅子王子(アスラーン)……」
「やめろと言っている!」
言いながらダライアスは愛馬アジ・ダハーカから下馬し、親子のもとまでゆく。
周囲は騒然となり、ことの成り行きを見守っている。侍女のヤースミーンにパルヴィーンも固唾をのんで見守る。
ダライアスは跪く親子のもとまでゆくと、片膝を地につけ姿勢をかがめた。
「予が憎いか」
「憎いさ! アラシアの蛮族!」
「おやめなさい! ああどうかお許しを。罪は私が一身に負います。どうかこの子を、お許しあれ!」
母親は子を抱きしめ、必死に懇願していた。
察するに、この親子はクンリロガンハにて死した騎士の家族なのであろう。
「強くなれ」
「え……?」
「予を討ちたくば、強く生き抜くのだ」
それだけを言うと、愛馬に戻り。何事もなかったかのように帰路に着いた。イムプルーツァも騎乗し、ヤースミーンとパルヴィーンらとともにあとにつづく。
「お慈悲は一度までだぞ!」
そう周囲に言ってから、
「獅子王子は優しいが、優しすぎる」
と、イムプルーツァは憂いを含んだ声で言った。
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