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ヒロが石を持ち始めたのを見計らって、リビドーがヒロに対して背を向けるよう反時計回りに少しずつ回る。
つまり俺は、リビドーの左奥にヒロが見える位置まで動いた。
持った石を、バルブに向かって投げている。
俺は持った鎖を鞭の様に、リビドーに叩きつけた。
顔がないから効いているかわからないが、恐らく効いていないだろう。
リビドーが軽く振る包丁を避けながら、俺はひたすら祈った。
頼む、成功してくれ……!!
その直後に、ガキンと鈍い音が聞こえる。
今まで聞こえた、石がバルブに当たる音じゃない。
同時に乾いた鉄の音が、周りに反響する。
「やった!」
ヒロが喜んでいるが、今はそれどころじゃない。
「走れ!ヒロ!逃げるぞ!!」
俺の声に、弾かれたかのように走り出すヒロ。
それに気付いたリビドーは首斬り包丁を振り上げるが、一足遅かったな。
バルブの無くなったパイプが、悲鳴をあげる。
行き場を無くした水は、出口を求めて飛び出す。
そう、こんな感じで。
水は勢いよく、バルブがあった穴から飛び出す。
まるでホースから飛び出る水のように暴れて飛び出し、それはリビドーに直撃した。
「ゥガアッ!?」
リビドーは水から逃げるように、何処かへと走り去っていった。
それを見た俺は、腰が抜けたかのように座り込む。
助かった。
一か八かの賭けに、何とか勝ったんだ。
ヒロは心配そうに、俺の背に乗るサヤを見ている。
さっきまではリビドーに気を取られて気がつかなかったが、サヤの出血は止まっていない。
「額を切ってるんだ。急がないと……!」
俺たちは再び、救護室へと走った。
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