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あれ?
私、いつ眠ったんだろう。
眠った覚えは無いのに、夢の中のように身体が軽い。
夢の中なんだなぁと理解しても、眠った記憶が無くて少し怖くなってきた。
「誰かいませんかー?」
思い切って叫んでみたけど、誰の返事もない。
私、もしかして独りきり?
「サヤ……サヤ……!!」
あっ!!
間違いない、カイトが私を呼ぶ声が聞こえる。
カイトは私の彼氏。
初恋の相手でもあったんだけど、付き合えるなんて微塵も思わなかったんだ。
告白が成功した時、やっぱり嬉しかったな。
っていうか今はそんな場合じゃない!!
カイトの声がする。
カイトを探さなきゃ……!!
ふわつく身体を無理矢理進ませ、ようやくカイトの背中を見つける。
私は飛びつこうと、その背に向かって走った。
違和感が襲ったのは、その直後だった。
私はカイトの事、なんでも知ってる。
仕草だって、好きなものも嫌いなものも、全部知ってる。
知ってるからこそ、このカイトが本物じゃない事はすぐわかった。
「誰?カイトの真似して……」
「何言ってるんだ?俺だよ、カイトだよ」
彼が振り返ろうとしている。
ダメ、見ちゃダメ。
わかってるのに、私の目はカイトに釘付けになっていた。
嫌だ、嫌だ嫌だイヤだ嫌だイヤだ!!
「いやぁぁぁぁ!!」
カイトの顔が焼けただれてるのを見て、私は思わず叫んだ。
あれが偽物だと知っていても、あんなカイトの姿は見たくなかった。
グッと目を閉じ、全てをシャットダウンする。
夢なら覚めて……!!
自分自身にそう必死に言い聞かせながら、その場にしゃがみこんだ。
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