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扉を出ると左は吹き抜けになっていて、そこから怪物の雄叫びが聞こえる。
思わず足が震えるけど、カイトに会えればそんなの怖くない。
私は右手側の扉を、勢いよく開けた。
だけどあまりにも勢いよすぎて、バランスを崩してしまう。
失敗したって、そう思った頃には遅かった。
私は勢いよく、地面に転んでしまう。
「さ、サヤ!?」
カイト!!
私は痛い額も気にせず、顔を上げた。
目の前にはカイトが、心配そうに私を見つめている。
やっと会えたと嬉しく思いながらも、目の前で思い切り転んでしまって恥ずかしくもあった。
カイトは私に近付いて、優しく抱きしめてくれる。
「良かった、無事で」
「カイト……」
「怪我は痛むか?」
「ううん、大丈夫」
本当は少し痛むけど、それでもカイトをこれ以上心配させたくないから。
ふとカイトの肩越しに、誰かいるのが見えた。
メガネをかけた小太りの男。
あっ、私知ってる。
「ぷーへいくん!!」
「あはは、サヤさんにもバレたか」
「ぷーへい?」
「そう!クラスメイトの女子たちで呼んでるあだ名だよ」
このあだ名、一見バカにしてるようにみえるけど実はそうでもない。
普通にクラスメイトの名前を呼ぶのもありきたりだから、女子の中で全員にあだ名を付けるのが流行ってた。
ユウヘイはぷーへい、カイトはカール、私はさっちゃん。
所謂愛称みたいなもので、クラスメイトの殆どから許可もちゃんと得てる。
カイトにはまだ言ってなかったから、知らなかったみたいだけど。
「ぷーへいもいるって事は」
「あぁ、ユウヘイもこの監獄に囚われたらしい」
そうなんだ……。
他にもクラスメイトがいるかもって嫌な予感はしてるけど、私は口には出さなかった。
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