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目が覚めた俺は、縛られていた。
手足は鎖で巻かれ、血塗れの床に寝かされている。
頭が痛い。
視界が赤く染まっている。
頭から血が流れているのだろう。
ここは何処だと周りを探ろうとするが、暗くてよく見えない。
そのうえ、女の奇声が聞こえて思わずゾッとする。
よく耳をすますと、何かを引きずる音も聞こえた。
何なんだここは。
こんな所に来た覚えは無かったが、それ以前の記憶も欠落している。
最後に覚えていたのは、彼女にまた明日と公園で別れた所まで。
そこからの記憶がない。
第一、今が何日で何時なのかもわからない。
そう考えたら、お腹が空いてきた。
肌寒い場所だから、温かい食べ物でも食べたいな。
そう呑気に考えていたら、また女の叫び声が轟く。
そこでようやく俺は、違和感を感じた。
聞いた事がある、今の声。
暗い所に目が慣れてきた頃、目の前に鉄格子がある事に気付く。
鉄格子と理解した、その直後。
鉄格子左から、大きな足が見えた。
誰かが何かを引きずってやってきたのだ。
何処に行くのだろう?
聞こうと口を開けたが、足の正体が異常なモノだとわかると、思わず口を噤む。
一言で言うなら、異形者。
大きな布を被った2メートルの物体。
血に塗れていまいちハッキリ見えないが、人間じゃない事はすぐにわかった。
ただ次の瞬間、そいつが引きずるモノに思わず目を奪われる。
「サヤ……?」
「カイ、ト……」
そいつが引きずっていたのは、紛れもなく俺の彼女、サヤだった。
彼女は血塗れの顔で俺を見つめ、大粒の涙を流す。
「死にたくない……殺される……」
彼女はそう言葉を、漏らした。
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