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「サヤ!悪りぃな今日は」
夜8時、住宅街にある公園。
俺はサヤの家の近くの公園まで、彼女を送り届けた。
サヤは笑って大丈夫と言ってるが、本当はそんな事は無いだろう。
俺は今日、デートに遅刻したんだ。
しかも1時間。
普段から優しいサヤはやっぱり怒らなかったけど、罪悪感は凄いある。
長い黒髪に赤いカチューシャを付けた大人しい子なのに、人一倍しっかりしてる。
金髪でチャラチャラしてる俺の事を、一途に想ってくれるサヤを悲しませたく無い。
「もう、こんなことしないからさ!」
「怒ってないよ!私だって遅れちゃう時もあるし……」
嘘ついてまで俺に謝らせない様にするなんて、やっぱり優しすぎるよ。
「本当にここまででいいのか?」
「うん。ここから家、近いから」
「そっか、じゃあまた明日学校で」
そう言って俺たちは別れようとした。
笑顔でまた明日と別れるつもりだった。
彼女の表情が恐怖に満ちている事に気付いたのは、それから数秒後の事だった。
「カイト!!危ない!!」
俺は振り返れなかった。
突然背後から誰かに殴られ、後頭部に痛みが走る。
声にならない声をあげながら、俺はその場に倒れこんだ。
その後何が起きたかわからない。
最後に見たのは、俺を殴った人物の茶色の革靴だった。
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