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「お兄ちゃん、外れたよ」
「あぁ、ありがとう。だけどヒロちゃん……」
「ちゃん付けは嫌。呼び捨てでいいよ」
俺の言葉を遮ってばかりだ。
ちょっと苛立ったが、小さい子相手に怒鳴りたくない。
唾を呑み込み、ぐっと堪えた。
「俺は彼女を助けに行かなくちゃいけないんだ。さっきのヒロの言葉が本当なら、彼女はもうすぐ殺される」
「えっ……?」
予想外にも、ヒロは驚いている。
一体どんな意味で驚いているのか、俺がわかるはずがない。
「ボク、処刑場なら知ってる」
「でもやっぱり危険だよ。ヒロみたいな幼い子を連れてじゃ……」
「お兄ちゃんも、ウソツキなんだ」
言葉が出なかった。
連れて行くと約束はしたけど、危険な所を歩き回らせるのも正直気がひける。
だけどそう言ってても、ヒロは納得しないんだろうな。
「わかった、連れてくけど離れるなよ」
さっきまで落ち込んでいたヒロの顔が、一気に明るくなる。
よほど嬉しかったんだろうな。
「道案内、頼むよ」
「わかった!!」
俺はヒロと手を繋ぎ、カンテラを照らしながら監獄の先へと歩いていった。
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