裁きの監獄

6/12
前へ
/64ページ
次へ
「お兄ちゃん、外れたよ」 「あぁ、ありがとう。だけどヒロちゃん……」 「ちゃん付けは嫌。呼び捨てでいいよ」 俺の言葉を遮ってばかりだ。 ちょっと苛立ったが、小さい子相手に怒鳴りたくない。 唾を呑み込み、ぐっと堪えた。 「俺は彼女を助けに行かなくちゃいけないんだ。さっきのヒロの言葉が本当なら、彼女はもうすぐ殺される」 「えっ……?」 予想外にも、ヒロは驚いている。 一体どんな意味で驚いているのか、俺がわかるはずがない。 「ボク、処刑場なら知ってる」 「でもやっぱり危険だよ。ヒロみたいな幼い子を連れてじゃ……」 「お兄ちゃんも、ウソツキなんだ」 言葉が出なかった。 連れて行くと約束はしたけど、危険な所を歩き回らせるのも正直気がひける。 だけどそう言ってても、ヒロは納得しないんだろうな。 「わかった、連れてくけど離れるなよ」 さっきまで落ち込んでいたヒロの顔が、一気に明るくなる。 よほど嬉しかったんだろうな。 「道案内、頼むよ」 「わかった!!」 俺はヒロと手を繋ぎ、カンテラを照らしながら監獄の先へと歩いていった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加