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6月に入り、蒸した生温かい風が漂う放課後の教室。
まだ帰り支度もしていない拓未は、黙々とノートに何か書き込んでいる。
実はこのクラスになったのを機に、彼は毎日の出来事を日記に書くようにしている。
こんなところで堂々と日記など書いているのは、教室でノートに何か書いていたとして、誰も気にも留めないのがわかっていてのことだろう。
「なぁ拓未、知ってるか?」
そこへ唐突に声が掛かる。
やって来たのは彼の小学校時代からの腐れ縁・佐和城大輔である。
「何を?」
拓未は相変わらず、ノートに筆を走らせながら聞き返す。
「幽霊さわぎだよ!
最近北側の旧校舎、とくに資料室あたりから動物のうめき声が聞こえてきたり、火の玉みたいなのが浮いてるのを見たってヤツが続出してるんだよ」
拓未の名前が彼のオタク的嗜好を体現しているように、大輔もまた、その名前が身を体現しているらしい。
彼はとにかく、噂話やお祭さわぎなどが大好きなのだ。
「ふぅん」
まるで興味のなさそうな拓未の返事も気にせず、彼はひどく一方的な提案をしてきた。
「そこで、だ。
俺達で原因を究明してやろうじゃないか?」
「俺パス。
そんな子供じみたことやってるほど暇じゃない」
拓未はあっさりと断る。
実際、日頃から虚無魔撃退に気を張っているので、最近はなかなかゆっくりできていない
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