旅立ち

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トリップ場へ移動してからもすぐには旅立てずにいた ただの準備なら、ずっと前からしてあった これから向かう先で必要になるであろうものも、心の支えになるであろうものも あとは心の準備 慣れ親しんだ場所を離れてたった一人で、知らない場所で、生きていく覚悟 (……しっかりしなくちゃ) 目を閉じて深呼吸をして、そして再び目を開ける 収納してあった袴と刀を持ち、長い黒髪を高い位置で結び、容姿は男に見えるようにした こんな簡単なことで向こうでやっていけるとは思っていない 昔の言葉も文字もできる限り習得し、今ここに立っている 行くしかない、私しかいない 先がわからないことへの恐怖を胸のそこにしまいこみ タイムトリップ専用魔法具に己の魔力を注ぎ込む そして…… 「……1863年7月6日京…。」 短い言葉とともに幕末へと翔んだ 新撰組もとい壬生浪士組の波乱の幕開けとなる池田屋事件の1年前へと……
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