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真夏のジリジリと突き刺すような日差しと
それを反射してコバルトブルーに深く輝く海。
カモメが空を舞い、漁船が行き交い、
ときおり鰯が銀色に輝く腹を見せて水面を飛び跳ねる。
西扇島海浜公園の波しぶきの上がる
テトラポッドに腰を下ろし、県立秋葉高校2年生の
一条あかりは夏制服の半そで白ブラウスに
赤いリボンを結び、グレー/レッドチェックのスカート
姿で海を眺めていた。
「あっついなあ。もう。」
隣に座っているクラスメート、
汗を拭きながら根岸京香が暑さに耐えかねて
鞄からうちわを取り出して扇ぎ始めた。
「京香、もう家に帰って涼んだらどう。
私は家よりここのほうが涼しいから。」
そう応えた時、あかりは
テトラポッドの波打ち際の水面に、
プカプカ浮く茶褐色の楕円形の物体を発見した。
「あれ、何かしら。」
「どうせゴミよ。」
如何にも興味のなさそうな回答が京香から返ってくる。
「ちょっと、気になるんだけど。」
言葉を発しながら即行動に出て、
テトラポッドの突起を
伝って、波しぶきを被って少し濡れながらも、
茶褐色の楕円形の物体を両手でキャッチした。
丁度バスケットボールくらいの大きさだった。
「これって、椰子の実じゃないの。」
叩くとコンコンと鈍い音がする。
「椰子の実って食べられるんじゃなかったっけ。」
「あかりはスマホ持ってないからね。
調べてあげるよ。」京香が鞄からスマホを取り出して
「椰子の実」を検索する。
「あった。うん。中にジュースが入っていて
果肉も食べられるそうよ。」
「じゃあ、半分ずつ、山分けにする?」
あかりが目を輝かせて言った。
「うーん。なんか怪しそうだから、
私は遠慮しておくよ。 先に帰るね。」
「うん、それじゃあ、また明日。」
あかりは独りでテトラポッドに腰を下ろし、
しげしげと椰子の実を眺める。
「あれ、なんだろう。これ。」
側面に鋭利な刃物で抉って書いた
文字のようなものを発見した。
「大日本帝國萬歳 聖戦士之証」と刻まれていた。
椰子の実をよく観察すると表面が硬化して
かなりの年季の入ったもので、
中の果汁や果肉がもはや食べられる状態では
ないことが想像できた。
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