マンションの部屋

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マンションの部屋

 自宅の目の前に建った高層マンション。いつ頃からか、見上げると、四階の角部屋の窓に妙な影が映るようになった。  じっと窓辺にたたずんでいる時もある。狂ったように踊っている時もある。ある時は、包丁らしき物を振り上げながら右往左往していた。  さすがに見かねてマンションの管理人さんだという人に連絡を入れた。 「その部屋にいるのは、七十を越えたおばあさんだけだよ。一応周辺にも色々聞いたけど、問題のある家庭はなかった。見間違いなんじゃないの?」  さも面倒くさそうに告げる管理人に、それでも一応電話越しの謝罪をし、以来、アタシはこのマンションには関わらないことを心に誓った。  …だから、今、見えている光景も無視することにする。  窓の向うには、いつか目にした『包丁を振り上げる人影』。ちなみに今日は、それを振り下ろされる人影も見えている。  でもあの部屋には、独り暮らしのおばあさんしかいないんでしょ? アタシが見ているものは妄想なんでしょ?  だから全部無視する。  でも本当は、無視した方がいいんだよね?  だってあの部屋、管理人が言うような、おばあさんさえ住んでいないんだから。  建ったのはそんなに昔じゃないのに、何か色々と噂があるらしく、あまり入居者のいないマンション。特にあの部屋は、最初の人が三か月借りて、すぐに解約したらしい。  そんなマンションがこの先どうなるのか。  色々見えるけれど、たかが近所に住んでるだけの女子高校生。あのマンションの存在にデメリットこそあれメリットなんて何もないから…知らなーーーーい。 マンションの部屋…完
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